タバコのヤニによるクロスの張替え請求

入居者の退去時に部屋の中に入ると部屋中の全てにヤニがべったりついて、あっけにとられることがありました。
リビング、キッチン、トイレ、玄関と全てのクロスが黄色に変色しています。エアコン、ドア、玄関ドア、照明などにもたっぷりとヤニがこびりついています。

この場合には、どこまでクロス張替えの請求ができるのでしょう?

タバコ喫煙によるクロス交換

国土交通省ガイドライン

平成23年8月に出された国土交通省住宅局による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると次のようになっています。

原状回復
原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、 善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

タバコのヤニについては次のようにしています。

タバコ等のヤニ・臭い
(考え方)喫煙等によりクロス等がニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いと考えられる。

つまり、タバコによるヤニは通常の使用による汚損を超えていると判断でき、入居者にクロスの張替え請求しても問題ないことになります。

経過年数による減価割合

ガイドラインには経年による減価割合についても示しています。これによるとクロスは、6年で価値が0になるとなっています。毎年1/6毎価値が下がり、下がった分はオーナーの負担というものです。6年を経過したら全額オーナー負担です。

つまり、クロスの張替えに10万円かかったとしても、入居者が6年住んでいて退去する場合には、タバコのヤニであろうと落書きであろうとネコの引っ搔き傷であろうと原状回復義務はないというものです。

しかし、きれいに使ってもらっていればクロスは6年以上持ちますし、傷や汚れがあっても部分補修で済みます。オーナーにとってはかなり異議があるものです。

ガイドラインでは、このようなケースも考慮されており次のようになっています。

なお、経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、そのため、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得ることを賃借人は留意する必要がある。 具体的には、経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである。

つまり、クロス本体の耐用年数は6年で請求できなくでも工事費や人件費などについては請求できるというものです。

特約を忘れずに

上のようなガイドラインがあっても、退去者ともめることは十分にありますので、タバコのヤニによるクロスの張替えは契約時に特約として設けるといいかと思います。
特約については、次の要件がガイドラインで定められています。

1 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

入居時の契約で、「タバコ喫煙の場合は退去時に借主がクロスの張替え費用を負担する」「その費用は1㎡あたり○○○円です」と特約で明示しておきます。

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